アキラのMHX日記

モンスターハンタークロスのプレイ日記です。ネットで知り合った狩り友達も多数出演中。どんな人でも、ゆっくりしていってね。

狩猟物語〜軍靴を履いたアイルー〜

※この作品はモンスターハンターの二次創作です。原作設定が家出しました。独自解釈、独自設定などお口に合わない成分が含まれている可能性があります。

それらが無理だという読者様には残された道が一つだけあります。それは…


逃ぃげるんだよぉぉぉ!

大丈夫だ。問題ない。
という方は、ゆっくりしていってね



@軍靴を履いたアイルー@

読者の皆様、こんにちは。私は月刊誌、狩りに生きる、の記者を勤めている者です。話題の人気ハンターの狩場密着取材からアイルーキッチンの今日の献立まで、とにかく狩りに関することを何から何まで取材しつくすのをモットーとしております。最近、空前のアイルーブーム到来ということで、本誌もアイルーにまつわる記事を載せる運びと相成りました。今日はその取材のために、とある村に来ております。いやー、なかなか交渉には骨が折れましたよ。まー、結局はアイルー族初めてのハンター様にご教授いただいて、マタタビ10本、送料はこちらもちで、引き受けていただきましたが。近年、マタタビが不作でしてこれまたハンターズギルドに依頼を出さなければならなかった始末。何としても、ものにしなければならない大取材なのであります。

さて、皆様は『軍靴を履いたアイルー』をご存知でしょうか。一時期話題になったアイルーがおりまして、なんでもそのアイルー、儀礼用の細身のレイピア一本のみを携えて数多のモンスターから人々を護ったのだとか。その活躍が認められ、ハンターズギルドより特別にギルドのナイト達が身につける軍靴と羽帽子を授与されたそうです。そんなハンター顔負けの伝説のアイルーが、今回の取材のお相手なのです。さあ、ここが待ち合わせの村の集会所です。さっそく中に入ってみましょう。

うわあ。ハンターさんがいっぱいですね。それにギルドの受付嬢さんも。あちこちに私も知った顔ぶれがいます。あっちで腕相撲に興じているのは、ここ最近になって頭角を現した狩猟チーム、釣り人、の皆さんですね。彼らは魚竜種討伐のエキスパートなんです。ガノトトス、ドスガレオス、ヴォルガノス、最近になって海竜種まで研究し終えたと噂ですよ。とと、いけないいけない。さて、取材させていただくアイルーを探さねば。……おや、いらっしゃいましたね。カウンターの端っこにギルドの制服を身に付けて軍靴を履いたアイルーが。ではさっそく…。

『すみません。あちらのアイルーにマタタビールを一杯。』

さてさて、アイルーさんに特製マタタビールが行きましたね。お酒にマタタビ。ふふ、しこたま飲んで洗いざらい喋ってもらいますよ。

マタタビールとはアンタも悪いニャ、記者さん。ニャーを酔わせて洗いざらいの想い出を吐かせる魂胆なんだニャ?』

ソッコー、バレました。さすがは伝説のアイルー。そこらのアイルーのように、この手には引っかかりませんか。って、イッキ飲みしてるー!

『ブニャーーー!  ま、アンタも飲むニャ。』
『いやいや、仕事ですから、今から。』
『それもそうニャ。じゃ、始めるかニャ。』

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ニャーはアイルーである。名前は無かった。家も無かった。親も、兄弟も無かった。ニャーはただ、自分がここにいるということだけが分かっていた。ニャーには何も無かった。あるのはただ、生きなければならない、という本能だけだった。どこに行けばいいかも分からず、ただ、歩いた。幼いニャーには生きるための術が無かった。ふと、肉の焦げる匂いがした。いや、あの時はその匂いが、肉の焦げる匂いだと分からなかったから、とにかく良い匂いがした、というべきか。ニャーは本能的にヨダレが出るのを感じた。そして、そこに行かなければならないというのも身体が勝手に動いて教えてくれた。ニャーは空腹でふらつきながらも、その匂いのする方へ歩いて行った。

川岸で一人のハンターが肉を焼いていた。ニャーはよろめきながら、近付いて行った。ハンターは一瞬驚いたような顔をしてニャーを見た。そして驚いた顔で手に持っている黒い塊を見た。コゲ肉になっていた。ニャーが覚えているのはここまで。気がついたらニャーは、暖かい布団に包まれていた。周りを見渡すと、色んな草や、木の実や、キノコ、薬ビンが置いてあった。そして壁には二本の細いレイピアが立て掛けてあった。

『あ、気がついたか!』

声がした。川岸で肉を焼いていた、あのハンターだった。彼はテーブルの上に置いてあった何かを取って、手に持ったまま、ニャーの前に持ってきた。それは薬ビンに入った液体だった。ニャーはそれを舐めた。するとみるみる元気が出てきた。後から分かったのだが、それは元気ドリンコだった。ニャーは一命を取りとめたと同時に、初めての家族を得たのであった。

それからニャーはそのハンターの家に厄介になった。掃除をしたり武具の手入れを手伝ったり、ご飯を作ったりした。今でこそアイルーは人間顔負けの技能を身に付け、様々な就職口を開拓し、人間の生活に溶け込んでいるが、その時はまだ一般的ではなかった。ニャーは旦那さんと一緒に人間の言葉を勉強した。毎日が楽しく、暖かかった。それから少しして、旦那さんの事も、この世界のことも本を読んだりして段々と分かってきた。旦那さんは、ハンターズギルドに所属するギルドナイトだと言うこと。危険な任務に赴く事もあるということ。そしてギルドからの任務で、この村に専属ハンターとして滞在しているということ。

ハンターという職業は常に死と隣り合わせ。しかし、崇高な魂と、頑強な肉体を持った誇り高き職業であるということも理解した。死闘の末、同じく誇り高きモンスター達の爪牙にかかる事もまた天晴れであるということも。

そして、それはあまりにも早く、突然だった。
ある日、旦那さんは重要な任務に赴いた。
それきり、旦那さんは帰って来なくなった。
しばらくしてから、近所の村人が一本の折れた儀礼用のレイピアを持ってきた。

名誉の、戦死だった。

ニャーは泣いた。
泣いて、泣いて、また泣いて。
折れた一本のレイピアを見つめて。

旦那さんのレイピアが届けられてから、村人が慌ただしくなった。なにやら新種の凶暴なモンスターが近くの森林地帯で目撃され、ギルドから避難勧告が出たらしい。旦那さんと同じ格好をした人が、ニャーのところにもやってきた。そして、ニャーにも避難勧告を告げた。ニャーは、折れたレイピアを村の加工屋に持って行った。加工屋は渋い顔をしたが、折れたレイピアをニャーの身体に合うように研ぎ直してくれた。

ニャーはもう、何も無くなるのが嫌だった。
旦那さんを失い、更に旦那さんが住んでいたこの村までも無くなってしまうかと思うと、胸が張り裂けそうだった。ニャーは覚悟を決めた。旦那さんのレイピアを継ぎ、ニャーが旦那さんに代わって、旦那さんが大好きだったこの村を護ると。この村の営みを護ると。

それが、死にかけの自分を拾ってくれた旦那さんへの恩返しになると、信じた。


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『奴との戦いは本当に死闘だったニャ。どんな本にもアイツの事は書いて無かったからニャ。結局、ニャーの一撃がヤツの片目を捉えて、ヤツは逃げて行ったのニャ。それからヤツの行方は知らないニャ。それからニャ。ニャーがあちこち見回っては、モンスターに襲われて危なくなった旅人や村人を助け始めたのは。そうこうしてると、その、ヤツの撃退のことと、色んな功績と貢献が認められてギルドからこの装備一式を与えられたのニャ。』

なるほどなるほど。
おそらくその片目を失った新種の飛竜とは、少し前に巷を騒がせた獰猛なイャンクック亜種、イャンガルルガのことですね。まさかあの飛竜を最初に追い払ったのが、伝説のアイルーだったとは。しかもその波乱万丈、涙ありの過去まで…。これはいい記事が書けそうですよ。いや、記者としてではない私個人としても良いお話が聞けました。マタタビ10個は無駄では無かったです。

『そういえば、記者さん。アンタ、色んな取材をしてるんなら、片目を失った新種の飛竜のこと、何か知ってるんじゃないかニャ?』

『ええ、あれはイャンガルルガという、イャンクックの亜種にあたります。ですが、性格は好戦的で獰猛な飛竜です。その片目のイャンガルルガには数多のハンター達が幾度も挑戦し、結果、誰かが討ち取ったと聞いています。その取材を担当した記者は別の人なんですよ。』

『そうか、ニャ。あるモノを打ち倒したモノは、また別の何かに打ち倒されるものニャ。同じことを繰り返す限り、それは自然の摂理、仕方のない事なのかも知れないニャ。だから、いい加減のところで止めとくのがいいのかもニャ。今あるモノを大切にする、護る。それだけで十分なのニャ。欲張ると、イタイ目を見るのニャ。』


軍靴を履いたアイルーはニヒルに言いました。
その口調は穏やかでしたが、私はどこか、警告のような意味合いを感じたのです。ですがまぁ、ともあれ取材は無事終わりました。これから記事を書かなければなりません。あのアイルーさんとは、プライベートでもっと話をお伺いしたいものです。それでは、またどこかでお会いしましょう。