Dear ティガレックス
今日は2月22日。
10年前の今日、モンスターハンターポータブル2ndが発売された。そしてその象徴モンスター、ティガレックスが10歳の誕生日を迎えた日でもある。
ティガレックスは本当に思い入れが強い。
せっかくなので今回はいつものおバカなドタバタプレイ日記ではなく(MHXXの方ではそのおバカなドタバタプレイ日記を更新しているけどね!)筆者のティガレックスへの想いを認めてみようと思う。
筆者が初めてティガレックスに出逢ったのは、筆者がまだ中学3年生の冬だった。なんの警戒心もなく、筆者はポポノタンを採るために雪山へと登って行った。ティガレックス自体の存在、その風貌はオープニング映像ですでに知っていたのだが、まさかこんなに早く邂逅するとは思ってもみなかったので、若き筆者は大いに取り乱した。
だがハンターたるもの、いずれは激戦の火花を散らし、その爪牙と白刃を紙一重で肉薄し合うことを宿命付けられた相手を目の前にすれば、今は到底力及ばぬとも一太刀くれてやりたくなるのは、どうしようもない生まれ持っての性であろう。この時の筆者も、まさにこの心境であった。筆者は背にしていた鉄刀を抜き放ち、無謀にも猛然と斬りかかったのだ。
この勝負は、一瞬で着いた。
根源的な恐怖を想起させられる猛烈な突進を真正面から受けて、筆者はまるでボロ雑巾のように、地面に打ち転がされた。だが、その直前に、筆者の放った一閃はティガレックスの頭部を直撃した。筆者はそれだけで満足だった。
それにしても…。
純粋な暴力をもってして猛進するあの体躯。飲み込まれそうな真っ暗な口。無慈悲に肉を引き裂く爪牙。彼の全ては悲しいまでに、自然界の頂点、絶対的な捕食者としての風格を纏っていた。獰猛な視線は、筆者たち狩人を、ただの獲物としか捉えていないように思う。
そんな彼が持つ称号、それは…。
ー絶対強者ー
小細工など無用。ただ、闘争本能と限りなく純粋な力を持って獲物を狩り、屠り、喰らう。いかなる知恵や技術をも打ち砕き、蹂躙する、強者。
純粋な原初の力。
彼こそ、モンスターと呼ぶに相応しい存在。
筆者はズタズタにされた身体を引きずりながら彼から逃げ、ポポノタンを納品した。
「彼といつか、この世界でどちらが生き残るかの熾烈な戦いを繰り広げる。そして彼を超えられなければ、この世界で先は無い。」というプレッシャーと、わずかな憧憬を心に抱いていた。かつて、モンスターハンターGやポータブル、DOSなどで、イャンクックやリオレウス、モノブロスといった巨大な壁を、筆者は乗り越えてきていた。だから筆者には、ある程度の自信とプライドがあった。
だが、それらを彼は、ただの一撃で無残にも瓦解させてしまったのだ。大きな口を開けて猛進する彼の姿が鮮烈に脳裏に刻まれ、それを思うだけで恐怖した。
そしてある日、遂に、決戦の時が来た。
雪山に君臨する王者に挑む時が来たのだ。
あの時に比べれば、筆者は装備を充実させ、道具も潤沢に持ち、狩りの腕も上げた。ドドブランゴを退け、その他の飛竜たちとも渡り合った。時は満ちたのだ。だが、それでも筆者は身震いした。それは、武者震いであったのかも知れないが、やはりファーストコンタクトで心の奥底に刻まれた彼の恐怖は強烈だった。
彼を、超えなければ!!!
彼が、雪山の玉座で待っている!!!
震える脚に鞭を打って、筆者は彼が闊歩する雪山へと登山を開始した。雪山を登っている間、筆者はずっと、彼の猛進する姿を思い浮かべていた。どう攻撃をかわし、どう攻め込むか。どこに筆者の勝機があるのか。そのことを、彼の生活領域に踏み込んで行きながら、悶々と思考していた。
彼に対する戦いのシュミレートを入念にしていても、初戦は無残なものだった。咆哮に吹き飛ばされ、突進に轢き潰され、剛腕で薙ぎ払われた。到底、敵わなかった。
ハンター、引退しようか…。
当時、15歳の少年だった筆者はあまりの絶望にPSPを投げ出しそうになった。そんなネガティヴな想いとは裏腹に「彼を超えたい」という真逆の感情が芽生えていることに気付く。彼を超えなければならないという意識から、彼を超えたいという意志に変わった。
思い返せば、強敵たちを超えた時はいつもそうだった。何度も何度もボッコボコにされて、コントローラーを何度も投げた。しかしそれでも、またコントローラーを、PSPを、前よりも強く握り直してしまう。
自分の力で彼を超えたい!
その、たった1つの想いを胸に、筆者は何度も何度も雪山に赴き、彼に挑んだ。彼はその都度、変わらない暴力で筆者を手荒く歓迎した。筆者は彼の動きをよく見るようになった。そして、攻撃に踏み込んで良いときと、行ってはいけないときを見分けるようになる。
熾烈な互いの命の削り合い。
筆者とティガレックスの戦いは、遂にその境地に達したのである。罠を有効に使い、爆弾で有効なダメージを与える。更には、彼が怒り状態のときには、頭に攻撃が通りやすくなることに気付き、彼が怒って手が付けられなくなったときに、罠を仕掛けるという工夫も凝らす。
そして遂に、彼が脚を引きずった!
もう、勝利は目前だ!
熱っぽい興奮を抱きながらも、筆者は相反する別の感情を胸に満たしていた。
「お願いだから、まだ倒れないでくれ。お願いだから、 もう少しだけ、筆者の上に立っていてくれ。まだ、君との戦いに、終止符を打ちたくない!」
どうしようもないヤツだ。
自分でもそう思う。
あれだけ超えたいと願っていた相手を超える直前になって、彼を超えてしまった後の寂しさに怯えてしまったのだ。
それでも、ハンターたるもの、クエストをこなさなければならない。目の前のモンスターを狩る。それが、ハンターなのだ。
雪山の清浄な空気の中で、筆者の太刀が冷たくも美しい軌跡を残して煌めいた。
一閃。
その鋭い袈裟斬りは、彼の脳天を見事に直撃した。その一撃で、彼は遂に凍てつく大地に伏した。筆者はついに、彼を超えたのだ。
万感の想いを胸に、強敵となった彼を見下ろす。
持てる膂力を惜しむことなく振るい、ウサギを狩るのにも全力を出す獅子の如き王者の風格を纏った彼は、いま、筆者の白刃にかかって倒れた。
お前もまさしく
強敵だった…。
筆者は、彼との戦いを通して大きく成長した。それはゲーム中だけの話ではない。
自分が到底敵わない相手に出逢い、自分の無力を知り、己を磨き、乗り越えられるまで何度でも試行錯誤を重ねて挑む。彼は、そんな精神を筆者に教えてくれた。
彼は後々、我がチームのやっちゃん、ケンシロウ、そして筆者というハンター連合軍に対して、更なる暴虐無人な牙を剥くことになる。異常震域というクエストだ。筆者たちはまたまた追い詰められることになるのだが、それはまた別のお話だ。
絶対強者ティガレックス
2ndの番長
彼が生誕して10年。
筆者の長いモンスターハンターの歴史の中でも強い光を放つ、激戦の思い出。彼が筆者に与えてくれたものは計り知れない。
お誕生日、おめでとう。
10年前のあの時は本当にお世話になりました。
今の筆者があるのは、大袈裟でも誇張でもなく、君が容赦無く戦ってくれたおかげです。
これからも、良き強敵でいてください。何度でも筆者の挑戦を受け止めてくれたら嬉しいです。
それではまた、近々。
PS
紫、黄、青の肉は食べない方がいいよ!
アキラよりー